非居住者のための米国LLC:設立、SSNなしでのEIN取得、Form 5472、銀行口座

海外から米国法人を設立すること自体は、いちばん簡単な部分です。Wyoming(ワイオミング州)のLLCは、州の手数料100ドルで、オンラインなら午後のうちに設立でき、オーナーがどこに住んでいるかをWyoming州法が問うこともありません。問題はその後に起こります。社会保障番号(SSN)がなければIRS(米国内国歳入庁)のウェブサイトはEINの申請を受け付けず、銀行は申請書の住所が登録代理人のものだという理由で口座開設を断り、さらに会社に利益があってもなくても、毎年提出しなければならない税務書類があります。
このガイドは、実際に手続きが進む順番に沿って、米国外に住む創業者が各段階で何ができて何ができないかを説明します。内容は2026年10月時点の規則に基づいています。法律や税務の助言ではなく、当社は法律事務所でも税務申告代理人でもありません。
なぜWyoming州のシングルメンバーLLCなのか
Wyoming州には州の所得税がありません。Articles of Organization(設立定款)の手数料はオンラインでも紙でも100ドルで、年次報告の手数料は60ドルからです(Wyoming州務長官の手数料表)。同州のLLC法は、メンバーやマネージャーに国籍、居住、ビザの要件を設けておらず、会社の主たる事務所を州外に置くこともできます。
オーナーが1人なら、税務はシンプルです。このLLCは所得税上は存在しないものとして扱われる事業体(disregarded entity)で、IRSに対して負う義務は情報申告であり、これはステップ5で取り上げます。
ベンチャーキャピタルからの資金調達を予定する株式会社(corporation)なら、Delaware州のほうが適しています。請求書を発行し、販売し、代金を受け取るための会社が必要な創業者にとっては、Wyoming州で十分であり、費用も抑えられます。
LLCについて、誤解されやすい点が2つあります。
- 匿名ではありません。 公開される登録書類にオーナーの名前は載りませんが、Wyoming州は登録代理人に、マネージャーの氏名と住所、そして指定された連絡担当者の情報を保管するよう義務づけています(W.S. 17-28-104(d))。銀行も必ずオーナーの本人確認を行います。
- 外交政策上の規則の対象外ではありません。 2025年7月1日以降、米国商務省が「外国の敵対者」(foreign adversary)としてリストに挙げる政府が所有または支配する事業体について、Wyoming州はその法人格を失わせることができ、このリストには中華人民共和国が含まれています(HB0069)。条文上、この規定が対象とするのはそれらの政府とリストに掲載された者であり、それらの国の一般の市民ではありません。
ステップ1:設立と登録代理人
設立書類には、会社名と登録代理人を記載します。登録代理人は、Wyoming州内に物理的な所在地を持ち、そこで法的書類を受け取る人がいなければなりません。郵便受けだけの住所(drop box)は認められません。オンラインで提出した場合、手続きが完了した時点で会社が成立します。紙の場合は最大15営業日かかります。
次に運営契約書(operating agreement)を作成します。Wyoming州は求めていませんが、銀行は求めます。シングルメンバーLLCの所有者が誰で、誰が署名できるかを記録するのがこの書類です。
登録代理人の住所は、法的な郵便物のためのものです。お客様の事業用住所ではありません。それがこのガイドの中でなぜ何より重要なのかは、ステップ3で説明します。
ステップ2:SSNなしでEINを取得する
IRSのオンラインでのEIN申請には、責任者(responsible party)のSSNまたはITINが必要なため、どちらもなければ利用できません。海外の申請者向けの電話番号はまだ公開されていますが、2025年後半以降のIRSの内部マニュアルの改訂では、米国で設立された事業体を国内のものとして扱い、電話をかけてきた人には別の申請方法を案内するよう職員に指示しています。
残る方法は、Form SS-4のファクスか郵送です(IRS)。外国人オーナーにとって重要な欄が2つあります。
- 7b欄。 2025年12月改訂の記入要領以降、SSNもITINもなく、取得することもできないオーナーは「foreign」と記入します。ITINは不要です。
- 9a欄。 外国人が所有するシングルメンバーLLCは「Other」にチェックを入れ、「Foreign-owned U.S. disregarded entity-Form 5472」と記入します。
IRSが示す処理期間は、ファクスで約4営業日、郵送で約4週間で、申請が集中すると遅れると注意しています。Stripeは、自社で支援するSSNのない創業者の場合、10から30営業日かかるとしています。
SS-4にはオーナーが署名します。番号を受け取る第三者を指定受取人(designee)として記載することはできますが、本来の責任者に代わって名義人(nominee)が申請することは、IRSは認めていません。
ステップ3:銀行口座と、申請が通らない理由
当社が確認した米国の法人口座サービスはどれも、登録代理人の住所、バーチャルオフィスの住所、郵便転送サービスの住所を、事業を運営する場所として認めていません。求められるのは実際の住所です。深圳、バンガロール、ベオグラードにいる創業者なら、その住所は深圳、バンガロール、ベオグラードにあり、それをそのまま書くことが申請を通すための前提であって、妨げにはなりません。
2026年10月時点で、米国外に住むオーナーが置かれている状況は次のとおりです。
| サービス | 米国外に住むオーナー | 注意点 |
|---|---|---|
| Mercury | ほとんどの国から受け付け | 居住者を受け入れられない国の一覧を公開しており、判断基準は国籍ではなく居住国です。当社が確認した版は2026年10月6日に更新されたものです |
| Wise Business | 取引住所がWiseの法人向けサービス対象国にあれば受け付け | 取引住所は実在する場所でなければなりません |
| Airwallex | 会社の登録地によって利用資格が決まる | 事業の大部分が米国外で運営されている場合、追加の資料を求められることがあります |
| Relay | 現実的ではない | オーナー全員に米国内の物理的な住所が必要です |
| Brex | 現実的ではない | 米国内での事業運営と、米国内の物理的な住所が必要です |
これらの一覧は変わりますし、お客様が準備できるどんなことよりも結果を左右します。会社を設立する前に、お住まいの国について最新の版を確認してください。
あとは一貫性です。申請が通らない場合、たいていは食い違いが原因です。事業内容の説明とウェブサイトの記載が違う、住所が書類と一致しない、あるいはお金の出どころを申請書のどこにも説明していない、といったものです。申請の前に、事業内容の説明、ウェブサイト、利用規約、資金の出どころが同じ内容を語っていること、そして申請する人が会社のオーナー本人であることを確かめてください。ビデオや自撮りによる本人確認はお客様ご自身が受けるもので、人に任せることはできません。
ステップ4:Stripe
Stripeは、米国で登録され海外から運営されている事業を、条件付きで受け入れています(Stripe)。事業活動の大部分が行われている物理的な所在地の提出を求め、私書箱(PO box)は認めず、SSNのない代表者は自国の納税者番号を代わりに提出できるとしています。Stripe自身の会社設立サービスであるAtlasも、承認は保証できないと明記しています。
実際には、すべてを米国外で運営している会社は、米国での活動がある会社よりも多くの質問を受けます。また、Stripeは一部の国をリスクの高い国として扱っており、中国もその1つです。申請は銀行口座が開設されてから行い、銀行が受け入れたのと同じ内容をStripeにも伝えてください。
ステップ5:毎年のForm 5472
多くの人が見落とし、しかも最も高くつくステップです。1人の外国人が全額出資する米国LLCは、内国歳入法第6038A条の適用上、法人(corporation)として扱われます。オーナーとの間に報告対象取引があった年ごとに、形式上のForm 1120(pro forma)にForm 5472を添付して提出します(IRSの記入要領)。会社の設立や運営のためにオーナーが入れたお金も該当するため、設立した年から、収入の有無にかかわらず申告が必要です。
- 期限: 暦年の場合は翌年4月15日まで。Form 7004で6か月延長できます。
- 方法: ファクスまたは郵送。外国人が所有するdisregarded entityは、Form 5472を電子申告できません。
- 罰金: 提出しなかった場合、1件につき25,000ドル。内容が実質的に不完全な申告も未提出とみなされ、IRSから通知を受けて90日を過ぎても提出しない場合は、30日ごとにさらに25,000ドルが科されます。
お客様と会社の間のすべての送金を記録しておいてください。申告書はその記録をもとに作成します。
ステップ6:Wyoming州の年次報告
LLCは毎年、年次報告を提出し、ライセンス税(license tax)を納めます。金額は60ドルか、Wyoming州内にある資産の0.0002倍のいずれか多いほうで、会社を設立した月の1日が期限です。期限から60日以内に提出しなかった会社は、行政手続きにより解散させられます。登録代理人への支払いも欠かさないでください。登録代理人を失うことも、解散につながるもう1つの道です。
FinCENの最終規則が2026年8月14日に施行されて以降、米国で設立された会社は、連邦の実質的支配者情報(BOI)の報告を行う必要がありません(FinCEN)。この免除は規則によるもので、今後覆る可能性はありますが、現時点で提出するものはありません。
中国本土にお住まいの場合
米国側の手続きは同じです。違うのは中国側で、中国から会社にどのように資金を入れられるかは、そちらで決まります。
- 中国本土の企業が米国の子会社に投資する場合は、資金を動かす前にODI(対外直接投資)の届出を行います。省の発展改革委員会への届出、省の商務主管部門への届出、そして取引銀行での外貨登記です。
- 個人はSAFE Circular 37(国家外貨管理局37号通知)の対象となり、国家外貨管理局は、37号通知のスキーム以外では国内居住の個人は海外への直接投資ができないとの見解を示しています。2026年7月1日施行の国務院令第837号(「対外投資に関する国務院の規定」)は、国内居住の個人を対外投資の主体として明記しましたが、個人向けの詳細な規則はまだ草案の段階です。
- 個人の年間外貨購入枠は資本取引に使うことができず、海外への投資はその資本取引に当たります。
いずれも、中国国籍の方が米国法のもとでWyoming LLCを所有することを妨げるものではありません。ただし、会社への資金の入れ方は、銀行に相談する前に、まず中国の弁護士に相談すべき問題だということです。
手続きの順番
- 設立:オンラインで提出すれば当日。
- EIN:ファクスで約1週間から数週間。
- 銀行への申請:EINが届いてから。
- Stripe:銀行口座が開設されてから。
- 最初のForm 5472:設立年の翌年4月15日まで。
- 最初の年次報告:1年後、設立した月の1日。
サポートが必要な場合
当社は会社の設立も、登録代理人の引き受けも行っていません。EUのマネーロンダリング防止規則では、これらは規制対象の会社関連サービスであり、それに適用される規則のもとで業務を行う依頼先が担うべきものです。当社が行うのは、ご相談内容を確認し、現在のリストでお住まいの国の居住者を受け入れる米国の銀行があるかどうか、そしてその銀行に何を尋ねられるかを1営業日以内にお伝えすることです。進めたい場合は、お客様と直接見積もりや契約を行う米国の設立代行会社と税務申告代理人をご紹介します。ご相談は無料で、米国LLCのページからお送りいただけます。打ち合わせのご予約も承ります。
無料のご相談
何から始めればよいか迷っていますか。
お住まいの国と会社の事業内容をお知らせください。1営業日以内に、米国の銀行について予想されることをご返信し、進めたい場合は米国の設立代行会社と税務申告代理人をご紹介します。
お問い合わせ