Baidu Search Resource Platform と Google Search Console:実務のための対応表

欧州や英国の企業で検索を担当している方なら、Google Search Console の勘所はすでに身についているはずです。ページレポートが何を教えてくれるのか、サイトマップを送ってから効き始めるまでの感覚、「検出されましたが、現在インデックスに登録されていません」を聞かれたときの説明。そこに中国市場の話が入ってくると、疑問は一つに絞られます。百度で同じ役割を果たすツールは何で、いまの理解のうちどこまでが通用するのか。
結論から書きます。ツールは Baidu Search Resource Platform(百度搜索资源平台)、ziyuan.baidu.com です。いまの理解のおよそ三分の二はそのまま使えます。残りの三分の一は判断を誤らせるので、着手する前にどこが違うのかを押さえておく価値があります。
まず名称の話から
英語圏の解説記事の多くは、いまだに Baidu Webmaster Tools あるいは百度站长平台と呼んでいます。これは旧称です。百度は数年前に搜索资源平台へ改称しましたが、URL は変わっておらず、どちらも同じ製品を指します。「站长平台」と書いてある記事は、画面のスクリーンショットが現物と合わない程度には古いと考えてください。
管理画面は簡体字中国語のみで、英語への切り替えはありません。ブラウザの翻訳機能でも操作はできますが、中国語のラベルは手元に控えておいてください。特定のレポートについて情報を探すとき、検索語になるのは中国語のほうだからです。
使い始めるまで
Google Search Console には Google アカウントと確認済みプロパティが要ります。百度も必要なものは同じ二つですが、最初の一歩がはるかに重い。
百度账号(百度アカウント)が必要で、その登録には SMS 認証のための中国本土の携帯電話番号が求められます。海外の番号は通常受け付けられません。用途によっては実名認証(本人確認)も関わってきます。海外企業の大半がここで止まります。形式的な手続きではなく、実際の壁だと理解しておいてください。
中に入ってしまえば、サイトの所有権確認は見慣れたものです。ルートに HTML ファイルを置く、<head> に meta タグを入れる、CNAME レコードを追加する。Google と同じ三択で、確実性の順序も同じ、いちばん壊れにくいのは今もファイル方式です。
機能ごとの対応
| やりたいこと | Google Search Console | Baidu Search Resource Platform | 近さ | | --- | --- | --- | --- | | サイトマップ送信 | サイトマップレポート | 链接提交(リンク送信)のサイトマップ枠 | 考え方は同じ。百度側はサイト評価によって枠が開く時期があり、全プロパティに常時開放とは限りません。この扱いは変わります。 | | URL を一件送る | URL 検査からのインデックス登録リクエスト | 普通收录(通常インデックス)の手動送信、日次上限つき | 考え方は同じで、上限は明示的かつ有限です。 | | プログラムから送る | 汎用の手段はなし。Indexing API は求人と生配信のみ | 推送接口(プッシュ API、サイトごとのトークン)と JavaScript の自動送信タグ | ここは百度が明確に上で、差は小さくありません。 | | インデックス状況 | ページレポート、除外 URL ごとに理由つき | 索引量(インデックス数)の推移 | 百度が出すのは数字だけで、特定の URL がなぜ入らないのかは分かりません。 | | クロール統計 | クロールの統計情報 | 抓取频次(クロール頻度)、増減の申請も可能 | 百度は調整を申請できます。Google は 2024 年 1 月にその設定を廃止しました。 | | クロールエラー | ページレポートに統合 | 抓取异常(クロール異常) | ほぼ同等で、ネットワーク層の失敗については百度のほうが細かい。 | | クローラーとして取得 | URL 検査のライブテスト | 抓取诊断(クロール診断) | 近い。海外サイトにとっては、この製品でいちばん役に立つ画面です。詳しくは後述します。 | | 検索クエリとクリック | 検索パフォーマンス、16 か月分、クエリ・ページ・国・デバイス、エクスポートと API | 流量与关键词(トラフィックとキーワード) | 概念は同じですが中身は薄い。期間が短く、分解も粗く、実装に使えるレポート API もありません。 | | モバイル | モバイルユーザビリティレポートは 2023 年 12 月に廃止 | 移动适配(モバイル対応)、PC と モバイル URL の対応を申告 | 別ドメインのモバイルサイトを運用している場合だけの話で、欧州のサイトではまれです。 | | ページ体験 | Chrome の実ユーザーデータによるウェブに関する主な指標 | 実測データの相当機能はなし。代わりに規範文書として移动搜索落地页体验白皮书 | Google は測り、百度は定める。性質の違うものです。 | | 構造化データ | リッチリザルトテスト、公開された schema.org 語彙とドキュメント | 申請制の構造化データ枠組み | 百度では schema.org が実装経路ではなく、この枠組みは海外サイトにほぼ開かれてきませんでした。 | | 手動対策 | 手動による対策とセキュリティの問題 | サイトのセキュリティ通知と、名前つきのアルゴリズム公告 | 百度はアルゴリズムに名前をつけ(清风、惊雷、细雨、蓝天)、公告を読んでいる前提で運用します。 | | URL の削除 | 削除ツール | 死链提交(デッドリンク送信)、一覧をアップロード | 形は違いますが目的は同じです。 | | 被リンク | リンクレポート | 百度は外链分析(外部リンク分析)を数年前に廃止 | 被リンクのレポートは存在しません。 | | サイト移行 | アドレス変更、ドメイン単位のみ | 网站改版(サイトリニューアル)、新旧 URL のルールを申告 | 百度のほうができることが多い。 |
百度にあって Google にないもの
送信を実際に制御できること。 百度のこの製品は URL をインデックスに入れることを軸に作られていて、手段が三つあり、育てられる上限枠がついてきます。Google の思想はサイトマップを出して待つことです。一万件の URL を正規の方法で Google に押し込みたいと思ったことがあるなら、百度にはすでにその仕組みがあります。
交渉できるクロール頻度。 抓取频次 は Baiduspider の挙動を見せたうえで、増減の申請を受け付けます。Google は相当する設定を撤去しました。
デッドリンクの処理経路。 消えた URL のテキストファイルを渡すと、まとめて処理されます。Search Console にこの発想はありません。
ルールを書ける移行ツール。 网站改版 はドメインの置き換えではなく、URL のパターンを受け付けます。
Google にあって百度にない(またはほぼない)もの
実際に分析できるクエリデータ。 16 か月分、エクスポート可能、API と Looker Studio コネクタつき。百度のキーワードレポートは眺める画面であって、モデルを組めるデータセットではありません。
URL ごとの未登録理由。 ページが登録されない理由は Search Console がくれる情報の中で最も価値がありますが、百度に相当機能はありません。
フィールドの実測データ。 百度版の CrUX はありません。
機能する hreflang。 百度の国際化アノテーションの扱いは弱く、読まれない前提で設計すべき水準です。中国語のサイトやディレクトリは、それ単体で成立している必要があります。
順位:海外サイトで本当に違うところ
英語で書かれた百度の解説はたいていこの部分で俗説に変わるので、根拠が持つところだけを切り出します。
サーバーの場所と遅延
これは本物で、しかも神秘的な話ではありません。Baiduspider は中国本土からクロールします。欧州のオリジンへの越境通信は遅く、パケットも落ちる。誰のアルゴリズムとも関係のない物理の話です。上海からの TTFB が三、四秒あるなら、クロールの頻度も深さも落ちますし、中国のユーザーは描画される前に離脱します。
これは推測ではなく計測できます。抓取诊断 は Baiduspider として URL を取得し、観測した所要時間を返します。この数値が「うちのホスティングは問題なのか」に対する率直な答えで、一分で手に入ります。
香港やシンガポールからの配信は現実的な中間解です。フランクフルトより格段に速く、ICP備案 も不要です。
ICP備案
中国本土のサーバーでホスティングするには、工業情報化部を通じた ICP備案(ICP 届出)が必要で、そのためには中国の法人格が要ります。営利のオンラインサービス向けの重い許認可である ICP许可证(ICP ライセンス)とは別物なので、混同しないでください。
届出は「いちばん速いホスティングを使えるかどうかの関門」であって、チェックを入れれば順位が上がる要因ではありません。届出済みサイトに直接の順位加点があるかどうかは議論が分かれ、根拠も薄い。争いがないのは、届出済みで本土に置かれたサイトは中国国内から速く、速度は実際に効くという点です。
簡体字中国語のコンテンツ
百度は中国語のクエリに中国語のページを返します。英語のページはブランド名や製品名でたまに出る程度で、それ以外はほとんど出ません。繁体字は代わりになりません。zh-TW や zh-HK は書き方も用語も違い、本土の読者には現地のものとして読まれません。
機械翻訳は読めば分かりますし、成績も相応です。本気の百度施策で最大の費用項目はここで、これは SEO 予算ではなくコンテンツ予算です。
百度が自社サービスに与える重み
中国語の情報系クエリでは、百科、知道、贴吧、百家号 がファーストビューのかなりの部分を占めます。どれくらいかは議論があり、対象クエリと年によって測定値は大きく振れますし、2019 年前後の批判以降は比率が下がってもいます。それでも Google の自社枠より高い。
実務上の含意は、諦めることではなく狙いを選ぶことです。中国語の広い情報系ビッグワードでは、海外ドメインの上限は低い。一方で商用、製品名、ロングテールのクエリでは一枚目は通常のウェブ検索結果で、いつもどおりの勝負ができます。
JavaScript
Baiduspider のレンダリングは改善していますが、どこまで進んだかの公開資料はありません。Google は自社のレンダリングの仕組みを公開し、百度は公開しません。サーバーサイドレンダリングにすればこの論点自体が消えるので、定番の推奨になっています。特定の制約を主張しているのではなく、リスク管理の話です。
繰り返し語られるが正しくないこと
- 「百度では meta keywords が効く」。 百度自身のウェブマスター向け発信で、このタグは順位に使っていないと述べられています。description はスニペットの見え方に影響するので書く価値はありますが、順位のレバーではありません。
- 「.cn ドメインが必要」。 不要です。.com でも問題なく順位はつきます。
- 「百度は HTTPS を嫌う」。 百度は 2015 年から HTTPS に対応しています。
- 「百度のシェアは 60%」。 測定元、デバイス、年によって数字は変わり、長期的には下がり続けています。単一の数字はどれも疑ってかかるべきです。争いがないのは、百度が中国本土で最大の汎用ウェブ検索エンジンであり、海外サイトに文書化された入り口を用意している唯一の存在だという点です。
欧州企業として現実的に見込めること
所有権確認と送信そのものは短い作業で、それ単体で得られるのは可視性であって流入ではありません。欧州でホスティングされ中国語コンテンツを持たないサイトなら、数日ではなく数週間かけて部分的にインデックスされ、いくつかの区画は最後まで拾われない、というのが現実的な見込みです。
目的が「存在すること」、つまり中国の取引先、顧客、規制当局が社名を検索したときに何も出てこない状態を避けることであれば、インデックス登録だけで足りることが多く、費用も安く済みます。
目的が集客なら、百度はスイッチを入れれば流れてくるチャネルではありません。うまくいく順序はこうです。まずインデックスさせる。次に 流量与关键词 に自社ドメインで実際に何が出ているかを読む。そのうえで簡体字中国語のコンテンツと近い場所でのホスティングに投資する価値があるかを決める。データを持たないうちにこの判断をしてしまうことが、中国 SEO の予算が無駄に消える典型的な経路です。
送信の実務をこちらで引き受ける場合
アカウントの要件が欧州企業の大半を止めており、そこに気の利いた抜け道はありません。当社の Baidu 登録代行サービスは、ドメインをお預かりして送信を実施し、百度が実際に何をインデックスしたかをご報告します。料金はドメインごとの固定制です。中国の電話番号も、中国法人も、ご自身の百度アカウントも必要ありません。
対応表ではなく送信の手順を知りたい場合は、百度へのウェブサイト登録ガイドをご覧ください。中国市場向けの取り組み全体を検討中でしたら、打ち合わせをご予約ください。範囲を率直に整理します。
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ドメイン所有権の確認、サイトマップとURLの送信、2週間後のインデックス状況レポートまで。1ドメイン、定額制。中国の携帯電話番号も、中国法人も、御社名義のBaiduアカウントも不要です。
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